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金閣宝                              No.582
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◆2017年4月14日、。   東洋蘭界の頂点に君臨し続ける柄物


 いつの時代、どの分野であれ、東洋蘭の大ブームが起こる時には必ず 人気をリードする品種というものがあるものです。

 昭和50年代に起こった日本春蘭紅花ブームの終盤頃、昭和 60年代初めに『玉殿の松』ブームが起き、それに続いて「無名縞物ブー ム」が、更に引っ張られる形で「黄色中透け物ブーム」が起きました。
 日本の春蘭界では歴史上初めての「縞物ブーム」だった訳です。この
縞物ブームを絶えずリードして来た品種が『金閣宝』なのです。言葉を 換えて言うなら、日本春蘭花物ブームをリードしたのが『女雛』『山ノ 端』『秩父錦』であったように、日本での黄中透けブーム・韓国中透け ブームは、結局のところ『金閣宝』ブームであるとも言える訳です。
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出自

 採取は昭和57年頃、採取地は新潟県ということになっています が、来歴には多少の謎の部分があります。山出し当時は棒縞のチョイ柄 だったとか、4本立の1本に見事な黄色を現わしていたとか、ともかく 新潟県の蘭商・石綿一二三氏によって買い出された時には、4鉢だった といいます。内2鉢を四国の蘭商・平見和士氏に売却し、平見氏は九州 宮崎の川田芳雄氏と福井のK氏に納め、石綿氏の手元に残った2鉢は、 東京に納められました。私の手元に残る当時の業界誌の表紙を飾った川 田さんの『金閣宝』と東京のKさんに納まった『金閣宝』の写真とは、 どう見ても別の蘭のように見えます。川田さんの分は、紺覆輪が深い白 黄色中透けで力感あふれる半垂れ葉、他方は斑色は濃い黄色で照り葉の 横広がり半垂れ葉ですが、紺覆輪は浅い物でした。なぜ、棚割り当時に 別々に見える2種類が存在したのかは“謎”です。石綿氏亡き今となっ ては知る人もなく暗の中です。
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命名の由来

 この蘭は当初、石綿さんによって「金閣」と命名されていて、寿楽 園・平見さんの手で宮崎の川田さんに納められ、これを一目見た川田芳 雄氏は非常に気に入って、名前の「金閣」に「宝」を一字足して「金閣 宝」にしたいと思うがどうか、と石綿氏に問い合わせ、了解を得て日本 春蘭『金閣宝』の誕生となったのです。当時は寒蘭の柄物ブーム時でも あり、寒蘭柄物の『国宝』は日本春蘭柄物最高級品だった『国宝』から 名前を借りて命名したので、今回は川田さん命名の寒蘭柄物の『金閣 宝』という名前を春蘭に付けたい、という意向であったようです。
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性質

 信用のおける筋から種木を購入すれば問題はないと思われますが、 『金閣宝』の小さい時には、紺覆は色薄く、浅くかかるし、斑色は白っ ちゃけた白黄色だし、とても銘品に見えない程、貧相なものでありがち です。
 性質は柄物中でも上位クラスの丈夫な蘭ですし、小さな種木からでも 年々スクスクと作上がりに来ますので、大金を出せる人は別にして、 5~10万円で十分に作れる木が入手できます。3~5センチくら いの小さな木の時に、斑色は黄色濃く、紺覆輪が深々と入って、見るか らに銘品ぽく見えるようなら、心配なことです。小さいまま作上がりに 来ないようなら、品種を疑ってみる必要があるかもしれません。
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作る

 種木の作り方の要点は1つだけです。根数に比べて小さめの楽鉢に、 鉢底の目止め上の土は、上部まで山野草用の極細粒土の単品で植える か、水抜けが悪い土なら春蘭用表土小(直径5ミリ)との半々混合土 で、下から上まで植える事です。“コツ”があるとすれば「植え込み」 この一点のみでしょう。1バルブあたりの根数が少なく、新木の根下ろ しが悪いのでこの点を補い、普通に作っても上作するように植込用土で 加減する訳です。上木になり、葉長20センチ、6枚葉を繰り出す ようになれば、多少、大きめの用土を用いて徒長を防ぐ必要も出てきま すが、それまでは思い切って細粒で植込される事をお勧めします。その 際、表土に1層だけ薄く水苔を乗せておけば、細粒土植えによる 過乾燥と表土の暴れを防ぐことができます。
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美術株作りと繁殖

 葉丈10センチを超え、15センチくらいの中上木になると 「奴芽」(双子芽)や後木と前木とに芽が出る「後前」(うしろまえ) に芽を出したがるのも『金閣宝』の特徴です。2つの芽当たりを出し て、作者の欲心を計りに来たり、惑わせたりしますが、前述した通り、 根数の少ない蘭ですから、3~4本立の『金閣宝』に2本の芽を作上が りに育てるスタミナはありません。後前に来た時には当然ながら、迷わ ず後木を欠き、前奴(双子)に来た時には、根拠もありませんが、経験 上、新木に向かって左側の芽を残して右を欠いたほうが良くできます。 これを惜しいからと、芽欠きせず両方伸ばすと、7月中くらいは普通に 育っているように見えても、8月中旬には急に勢いが落ち、無惨な作下 がりになるのは必定です。
 
元気の良い中上木3本立ち以上になと、7月中には今年の新芽に押し 子(秋子)をかなりの確率で出してきます。これは、このままで育て、 翌年3には鉢を空けて、この押し子を外すようにします。この時、下り に根が居れば、別植えとし、押し子に根が無ければ惜しいのですが、切 除し捨ててください。
 これをせずに、押し子を付けたままで次年の作を掛けると、昨年の押 し子は根が無いために作下りになる上に、今年芽も育て難く、鉢全体と しては、みすぼらしい株に成り下がってしまいます。『金閣宝』は1年 に1本の芽だけを育て、繁殖は古木の1~2本を外してのバック吹きの みで行うと心に決めておくのが、前木に絶えず美術株を所有しておれる コツです。
ランも一流一級品ですが、この木は作者の蘭に対する姿勢を 問いかけて来るランでもあります。
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置き場と管理

 ひとバルブあたりの根数が少なく、新木の根下ろしが悪い、という一 点の特徴のほかは、性質そのものは強く、黄中透けの中でも作り易さで は上位に入るランです。陽にも肥料にも強いので、置き場所は作場の中 でも陽光のよく当たる所に置き、肥料も普通に消化します。柄暗みは無 いので、有機・無機質を問わず与えてください。放任作りでも葉が伸び すぎることはありませんが、葉長のわりに葉幅を引かせたほうが見栄え がしますので、栄養剤・活力剤の類は、控えた作りを心がけましょう。
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永遠のラン

 『金閣宝』の柄を言葉で表現すると、「紺帽子深覆輪黄中透け」とい うことになります。葉元から紺縞を押し上げたり、葉先の紺帽子から蹴 込みの縞を通したりもしない、黄色の斑部分と紺覆輪の部分の境目が ハッキリとした完全な中透け芸です。言葉で表わせば単純芸のような印 象を受けますが、斑切れの良さと襟組み(エリグミ)の正しさから、株 全体に気品を漂わせ、見る者を惹きつけます。
今日に至るも「風格ある 気高さ」という点で、黄中透け柄物を100鉢並べられても、この 『金閣宝』は遠目に見ても見分けがつくほどに優れた稀有の銘品です。
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<注>
この原稿は、「園芸ジャパン誌」が「自然と野生ラン誌」であった2007年に掲載されたものですが、エビアンはテッキリ、風来記にも書いてあるものだとばかり思っていました、。今回、「金閣宝」を取り上げるにあたり、「奥部屋」や「風来記」の過去スレを探したのでしたが見当たらず、自然と野生ラン誌の記事がオリジナル原稿であったことに気付きましたので、改めて今、掲載しておきます、。(風来記・エビアン)

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by evian_th | 2017-05-26 00:30 | 東洋蘭(春蘭)
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